特別な能力を持ち、条件を満たしたときにだけ可視しうるものは、何も幽霊だけではない。

「子を持つとはなんと浅ましい行為か」
女を知らない若輩の時分、友と話したことがある。
「愛する相手の遺伝子を受け継いだ子が生まれる、なんとも素晴らしいことではないか」
夢見がちな友は興奮ぎみに語る。
しかし君は「牛と豚の合挽き肉」くらいの理解にしか至らなかったので、「なるほど」などと適当な相槌でその話をよしてしまった。

それから十年経ち、友は、浮気調査の探偵なのだ。
磁場の状況次第では、霊も視えるのだろう。
まだその時ではない、それだけのことだ。

能力ないお前には、肉と肉のぶつかり合いに、刹那的な欲の高揚以外に何ら意味を見いだせない。
「合挽きか。明日はハンバーグだな」
行為の最中、射精感を抑えるためにそんなことを考えて、思わずにやけていたりする。